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食品とくすり(2021年7月)

 

はじめまして。2年目薬剤師の江原と申します。

 

私たちは日常的に食事を通じて様々な食品を体内に取り込んでいます。

何気なく摂取している食品の中には医薬品の効果に影響を与えるものもいくつかございます。

今月のあすかコラムは薬学生の皆さんにぜひ覚えていただきたい食品と薬の相互作用についてお伝えしたいと思います。


1.グレープフルーツ・その他の柑橘類


      

グレープフルーツは薬との相互作用で一番有名だと思います。

これはグレープフルーツに含まれる苦味成分のフラノクマリン類が薬の代謝を阻害し、血中濃度を上昇させるためです。

フラノクマリン類が含まれる量は食品によって異なります。


薬効に影響が大きい食品

グレープフルーツ、ハッサク、ブンタン

サワ―オレンジ、ポンカン、夏みかん

薬効に影響が少ない食品

バレンシアオレンジ、レモン、温州みかん

 


 

これらの食品と相性の悪い医薬品は以下の通りです。

①カルシウム拮抗薬*:高血圧、狭心症の治療で使用する医薬品

②カルバマゼピン:てんかん、三叉神経痛の治療で使用する医薬品

③シロスタゾール:慢性動脈閉塞症、脳梗塞発症後の再発予防として使用する医薬品

④ナルフラフィン:血液透析患者におけるそう痒症の改善に使用する医薬品

 

*カルシウム拮抗薬の中でも相互作用の強さは医薬品により異なります。

ニソルジピンやアゼルニジピンなどは特に相互作用が強く、添付文書の「使用上の注意」にグレープフルーツジュースの飲用を避けるように記載されています。

アムロジピンは相互作用が比較的弱いとされていますが、薬効に影響を与えるため飲用は避けるべきでしょう。

2.ビタミンK含有食品


 

ビタミンKを多く含む食品として納豆やクロレラ、青汁、大量の緑黄色野菜があります。

これらの食品と相性の悪い医薬品としてワルファリンがあります。


ワルファリン:血栓塞栓症の治療及び予防として使用する医薬品

 

ワルファリンはビタミンKが関与する血液の凝固因子が肝臓で生成されるのを抑制し、血管内で血液が固まるのを防ぐ効果があります。そのため、ビタミンKを多く含む食品を摂取することで、薬の効果が弱まるおそれがあります。

3.乳製品


牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品も相互作用が起こりやすい食品として有名です。

乳製品と相性の悪い薬に抗菌薬があることを、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。


①ニューキノロン系抗菌薬:トスフロキサシン、シタフロキサシン、ガレノキサシンなど

②テトラサイクリン系抗菌薬:ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど

 

これらの医薬品は乳製品に含まれるカルシウムと消化管内で難溶性のキレートが形成されることで、吸収が低下します。

効果を最大限発揮させるために、薬を服用する2時間前から乳製品の摂取は控える必要があるでしょう。

さいごに


今回は食品と薬の相互作用についてお伝えしまいたが、その他にもカフェインやアルコール、セイヨウオトギリソウなど注意が必要なものは多くあります。

薬学生の皆さんは国家試験合格のためだけでなく、現場で役立つ知識の習得のためにも勉学に励んでいただければと思います。